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ACEs ~前編~

ここまくん
ねえねえ堀越せんせー。この前トラウマについて教えてくれたでしょ? あれからちょっと気になって、自分でも調べてみたんだ。
堀越先生
へえ、偉いねここまくん。それで、何かわかった?
ここまくん
それがね、子どものころにつらいことがあると、大人になってから病気になりやすくなるって書いてあったんだよ。子どものころのことなのに、大人になってからも関係があるなんて、なんだか不思議じゃない?
堀越先生
そうだね。実はそれ、最近とても注目されている研究なんだ。「ACEs(エーシーズ)」っていう言葉を聞いたことはあるかな?
ここまくん
えーしーず? なんだか強そうな名前だね。新しい戦隊ヒーローかな?

 

 

 

 

 

 

堀越先生
あはは、残念ながらヒーローの名前じゃないんだ。じゃあ今日は、そのACEsについてお話ししてみようか。

【ACEsってなんだろう?】

堀越先生
ACEsというのは、英語の「Adverse Childhood Experiences」の頭文字をとった言葉で、日本語では「逆境的小児期体験」と呼ばれているんだ。簡単に言えば、子どものころに経験する、とてもつらい出来事や、安心して暮らすことが難しい環境のことだよ。
ここまくん
……テストで0点取って怒られちゃうとか?
堀越先生
それもまあ、つらいだろうけど、それだけでACEsというわけではないんだ。たとえば、大人から何度もひどい言葉を浴びせられたり、暴力を振るわれたりすること。必要な食事や世話をしてもらえないこと。家の中で大人同士が暴力を振るっているのを見ることなどがあるよ。
ほかにも、家族のアルコールや薬物の問題、心の病気、親の別居や離婚などによって、子どもが安心して暮らせなくなるような家庭の問題も、ACEsの研究で取り上げられてきたんだ。
ここまくん
へえ……。子ども自身が何かひどいことをされる場合だけじゃなくて、おうちの中で起こるいろいろなことも関係するんだね。
堀越先生
そうなんだ。もちろん、家族に病気があったり、親が離婚したりしたら、必ず子どもが傷つくということではないよ。そういうときにも、周りの大人が子どもを支えて、安心できる生活を守ってあげることが大切なんだ。
最近では、いじめや差別、貧困など、子どもを取り巻くさまざまな逆境体験にも関心が広がっているんだよ。

ここまくん
なるほどねぇ。じゃあさ、ACEsとトラウマはどう違うの?
堀越先生
いい質問だね。ACEsは、子どものころにどんなつらい体験をしたか、ということに注目した言葉なんだ。一方、トラウマという言葉は、つらい体験によって心に傷を負うことだね。ACEsを経験した人が、必ずトラウマになってPTSDになるというわけでもないんだよ。

【子どものころの体験が、大人になってからも影響する?】

ここまくん
でも先生、子どものころにつらいことがあっても、大人になったら忘れちゃうんじゃないの? ぼくなんて、きのうの晩ごはんが何だったかも忘れちゃうことがあるよ。
堀越先生
ここまくんの場合は、もうちょっと覚えていてほしい気もするけどね……。
実はね、アメリカでたくさんの大人を対象に調査をしたところ、子どものころにACEsを多く経験した人ほど、大人になってからうつ病などの心の病気や、心臓病などの身体の病気になる割合が高いことがわかったんだ。
ここまくん
ええっ! 心の病気だけじゃなくて、身体の病気も? いったいどうして?
堀越先生
人間の身体には、危険なことが起こったときに、自分の身を守るための仕組みが備わっているんだ。たとえば、怖いものを見たときに心臓がドキドキしたり、身体が緊張したりするでしょう?
ここまくん
うんうん! ぼくもお化け屋敷に入ったとき、心臓が飛び出しそうになったよ!
堀越先生
そうそう。それは、危険から逃げたり身を守ったりするために、脳が身体に「気をつけろ!」という警報を出しているからなんだ。これをストレス反応というんだよ。
でも、もし毎日のように怖い思いをして、いつもビクビクしながら暮らしていたらどうなるだろう?
ここまくん
うーん……。ずっと緊張していたら、疲れちゃうよ。夜もゆっくり眠れないかもしれないね。
堀越先生
そのとおり。人間の身体も同じなんだ。とても強いストレスが長い間続き、安心させてくれる人もいないと、身体の警報が鳴りっぱなしのような状態になってしまうことがあるんだ。こうした状態を「毒性ストレス」と呼ぶことがあるよ。
そうすると、脳や身体の成長、ストレスを調節する仕組みなどに影響が出ることがあるんだ。子どものころのこうした影響が、大人になってからの健康にも関係しているのではないかと考えられているんだよ。
ここまくん
そっかぁ……。つらいことを忘れたつもりでも、身体の中では影響が残っていることがあるんだね。
 

ここまくんと堀越先生のお話は、まだ続きます。
 

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